東京高等裁判所 昭和58年(う)201号 判決
被告人 川村和男 外二名
〔抄 録〕
被告人岩邊の原判示第三の所為は、二筆の宅地及び一個の建物(附属建物五個)について各抵当権設定及び停止条件付賃借権仮登記の虚偽の登記申請を一括して行い、登記官をして各不実の記載をなさしめ、かつ、これを登記所に備え付けさせて行使したものであるが、土地登記簿及び建物登記簿はそれぞれが全体として一個の文書で一個の「公正証書ノ原本」に当たると解されるので(不動産登記法一四条、一五条参照)、複数の土地建物について複数の事項に関し登記簿に不実の記載がなされ、これが備付けられて行使された場合でも、それが一回の虚偽申請行為に基づいて行われたときには、土地登記簿及び建物登記簿のそれぞれについて刑法一五七条一項、一五八条一項の各一罪が成立すると解するのが相当であるから、被告人岩邊の前記所為中公正証書原本不実記載の点は土地登記簿及び建物登記簿毎に同法一五七条一項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、不実記載公正証書原本行使の点は土地登記簿及び建物登記簿毎に刑法一五八条一項、一五七条一項、罰金等臨時措置法三条一項一号にそれぞれ該当するところ、右の土地登記簿及び建物登記簿に対する各不実記載は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であり、右各不実記載と前記各同行使との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、刑法五四条一項前段、後段、一〇条により結局以上を科刑上一罪として最も重い土地登記簿についての不実記載公正証書原本行使罪の刑で処断することとする。
(桑田 香城 植村)